ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『白黒遊戯』第20話 痴話喧嘩

 路上ライブをしたら、謎の青年を泣かせてしまった。自分の演奏で誰かを泣かせたのは初めてだ。ノエルは慌ててバッグの中を漁る。

「大丈夫!?ティッシュティッシュ……ああん、もう!チェレンならすぐ出せるのに!」

 そう言いつつなんとかポケットティッシュを取り出しNの手に握らせる。だがNは動かず涙を流し続ける。仕方なくノエルはまたバッグを漁り、ハンカチを取り出した。

「もう……涙ぐらい自分で拭きなさいよ。」

 ノエルはNの目元をハンカチでごしごし拭く。鼻水はティッシュで拭き取った。だが涙も鼻水も次から次へと出てくる。呆れたノエルはティッシュをNの鼻に当てた。

「もう!鼻チーンして!」

 言われた通りNはティッシュに鼻水を出した。ノエルは汚れたティッシュを丸めてNのズボンのポケットに突っ込んだ。Nの顔が赤くなっていたが、泣いたせいなのかノエルが強く拭いたからかわからなかった。

「あんたハンカチとティッシュ持ってないの?」

…………。」

「しょうがないわね〜。ドラッグストア行きましょ。」

 ノエルは返事も待たずNの手首を掴んで歩き始めた。

 

✳︎✳︎✳︎

 

 なんとかドラッグストアを見つけ、ノエルは品を物色する。ポケモンたちはボールから出したままだ。

「何買おっかな〜?水?でも水道水ならタダだし……。」

 ノエルはティッシュとハンカチを探すついでに気になる商品をチェックしていた。Nは黙って辺りを見渡している。

「わ〜。これ高そう。カロス地方のおいしい水?ベルなら買うかも。コーラ……を買ったら不健康だってチェレンに怒られそう。Gatoradeゲータレード)ならいいかな?スポドリだし。」

 ノエルはぶつぶつ言いながら品定めをする。買い物に夢中でNのことを忘れてしまいそうだ。

「ノエル。これは何?」

「へ?」

 Nが指差したものは……精力剤だった。よく見たらスポーツドリンクの隣りは違う飲み物コーナーになっており、小さいポスターには「あなたの役に立つ!」「あなたの夜をサポート!」と書かれていた。

「ぎゃーーー!!」

 気まずくなったノエルは慌ててNの背中を押す。ツタージャモグリューワシボンは買い物かごを持って2人を追いかける。

「どうしたの?」

べべべべべ別に?」

 早足で歩くノエルは自分たちがどこへ向かっているかもわかっていない。

「さっきの飲み物……役に立つって書いてあった。」

「いや、立つけど!立っちゃダメなの!!」

「成分を見るとおそらく興奮剤……ポケモンバトルに使う物?」

「いや……あれは……人間用……。」

 ノエルは口籠る。いくらませたノエルでも、Nに「あれは人間が夜のバトル(?)に使うものです」とは言えなかった。恥ずかしすぎる。

 

 我に返るとノエルは自分たちが生理ナプキンを売ってるエリアにいることに気づいた。ナプキンだけでなく生理用ショーツも売っている。さっきの精力剤ほどではないが気まずい。ついてきてくれたポケモンたちとNには悪いがそこを離れようとした。しかしその前にNに話しかけられた。

「そういえばこれ……君のか?」

 Nはポケットからとんでもない物を取り出し両手で広げた。それは青少年が持っていてはいけない禁断のカルマ……黒いスケスケの紐パンだった。

「ぎゃーーー!!」

 ノエルは反射的にNの手から紐パンを奪った。しかし叫んだのはまずく、周りの人たちの注目を集めてしまった。素早く紐パンを隠したものの、品出し中のおばさん店員に見られてしまった。怪訝な顔でノエルとNを見ている。

「ちょっと!どうしてあんたがそれを持ってるのよ!?」

「ヤグルマの森で落ちていた。」

「やめて!それじゃあ私たちが野外プレイしたみたいに聞こえる!!」

 小声で話せばよかったのについ声を荒げてしまう。周りにいる人を誤魔化すためノエルは話を誤魔化そうとした。

「野外プレイ?」

「あ〜……野球をするならやっぱり屋外よね〜!」

 自分で野球と言ったのに意味深に聞こえるのはなぜだろうか。今は何を言ってもエロ関係にしか聞こえない気がする。

「そ、それより私お腹空いちゃった〜。早く行きましょ、ダーリン

「タジャ!?」

 動揺したノエルはなぜか思い出したようにとってつけたような彼氏設定で話し出す。自分でもやっていることの半分は理解できない。まだ何も買ってないのにノエルはNの腕を組んで入り口まで誘導しようとする。ツタージャは怒ってNの脚をポカポカなぐる。モグリューワシボンと話しながらついてきた。

 しかし大人しく見えて実は知的好奇心が強いNは新たな商品を手に取る。

「これはなんだ?初めて見る。」

「ぎゃーーー!!」

 細長い小さい箱は反射的に叩き落とされた。

 真っ赤になったノエルはNを両手で押した。勢いよく押されたNはタイミング良く開いた自動ドアを進み倒れた。ドアから入ろうとした客はNを避けたが、何が起きたかわからずポカンと見ていた。外にいる人たちもNを見ている。

「もう!あんたなんか知らない!!」

 ノエルはNを置いて走り去った。ポケモンたちはNには目もくれず主人を追いかけた。

 

 一方、店内ではさっき品出しをしていたおばさん店員が呆れて細長い小さい箱の商品を拾う。

「まったく……これだから最近の若い子は….…。」

 店員は商品に息をかけ埃を飛ばし、元の場所に戻した。

「今度またあのカップルが来たらコンームでも勧めようかしら……。手遅れじゃなければいいけど。」

 Nが手に取った商品は[妊娠検査薬]だった。

ポケモン小説『白黒遊戯』第19話 生きる思春期

「やばっ。マジで金欠……。」

 財布を開けたノエルはぼやいた。初めての都会に浮かれてしまった。大都会ヒウンシティ。そこにはなんでもある。アメリカの田舎では珍しい日本食。ゴージャスなスイーツ。オシャレな服屋。イケてるカフェ。ゲームセンター。あちこちで食べては遊んでいたら今月分のお金はあっという間になくなってしまった。

「タジャ〜?」

「グリュ〜?」

「ワ〜ボ?」

 自分のポケモンのかわいさに思わずキュンとするノエル。しかしすぐ頭を振る。かわいい子どもたち……もとい、ポケモンたちを飢えさせるわけにはいけない。アララギ博士からもらった今月のおこづかいは使い切ってしまった。旅に出る条件には自分でお金をやりくりをすることも含まれていた。アララギ博士チェレンに泣きつくわけにはいかない。ベルが金持ちだからといって甘えるのも論外だ。(なお、ベルの場合は父親が過保護なので家に毎日電話することも旅の条件に入ってる。)

「しょうがないわね〜……奥の手を使う!」

 そう言ってノエルはポケモンセンターのパソコンから大きなケースを2つ取り寄せた。

 

 どこの町にも人々が集まる憩いの場所がある。ヒウンシティの場合、中央にあるセントラルエリアがそうだ。噴水がありダンサーが集まってパフォーマンスすることもあると聞き、ノエルは大きな荷物を持ってここに来た。背負ったバッグからはエレキギター、四角いケースから取り出したのはアンプ。

 ギターをアンプに繋げ、準備するノエルを3匹のポケモンは興味津々で眺める。

「いい?ツタージャモグリューワシボン。私がギター演奏しながら歌うから、あなたたちは好きに踊って。」

「リュー!?」

 モグリューは目を輝かせた。初めて会ったときも踊っていたので、踊るのが好きなのだろう。モグリューは喜んで手足をバタバタさせた。

「リュー♪」

「タジャ!」

「ワ、ワッシ!」

 他の2匹も承諾した。金欠を打破するためノエルが思いついた手段は路上ライブだった。15歳の少女が重いギターとアンプを1人で運ぶのは大変だが、力持ちのノエルは平気だった。ポケモンたちの力を借りることなく軽々と持ち上げた。(そもそも進化前の3匹ではギターとアンプは持てない。ワシボンならアンプを足で掴んでなんとか運べたかもしれないが。)

 エレキギターはアンプがないと音が響かない。音をチューニングしながらノエルは自分に言い聞かせた。

(大丈夫……。学校の文化祭でも、パーティーでも、町のフェスティバルでもみんなの前で弾いたことある。)

 大都会で自分の演奏が通用するかわからない。カノコタウンのような田舎町では住人は全員知り合いだ。何を弾いても喜んでくれた。しかし今日の相手は見知らぬ大勢の都会の人たち。観客になってくれるかすらわからない。素通りされるかもしれない。仕事で忙しい社会人なら仕方ないが、暇そうな人たちにも無視されたら悲しい。いつもより演奏するのが怖い。

「でも……やってみなきゃわかんない!!」

 

 伴奏を始めた。明るくて元気な音楽だ。急に流れてきたメロディーに人々は反応する。

「みんな!こんにちは!私はノエル・ピースメーカー♪聴いて!私のオリジナル曲【青春でSHOW】!!」

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

【青春でSHOW

 

目覚ましうざい

朝マジつらい

学校めんどい

行きたくない

 

(タジャ!リュー!ワッシ!)

 

それでも行くの

友だち会いに

友だちいるから

がんばれる

 

(リュー!ワッシ!タジャ!)

 

昨日見たテレビとか

話題のスイーツとか

有名人のスキャンダルとか

お気に入りブランドの新作

好きなアーティストの新曲

 

(ワッシ!タジャ!リュー!)

 

話したいことたくさんあるのに

休憩時間ぜんぜん足りない

青春はタイムリミットあり

ティーネージャーは19まで

 

(タジャ!リュ!ワシ!)

(タジャ!リュ!ワシ!)

 

授業10分にして

休憩50分にしよ(タジャ!?)

春休みあるなら

秋休みもありでSHOW!(リュー♪)

 

(タジャ!リュー!ワッシ!)

 

勉強大嫌い

宿題いらない(ワシッ!?)

知りたいことだけ知りたい

それの何がいけないの?(ツタ〜)

 

(リュー!ワッシ!タジャ!)

 

大好きあの子とはしゃぎたい(リュッ!)

真面目くんからのお説教(タジャ!)

ムカつくあいつと言い争い(ワシ!?)

振り回されて楽しいでSHOW

 

(ワッシ!タジャ!リュー!)

 

It’s SHOW time !

ここからが本番よ

I’ll SHOW you my world ☆

これからは私の時代♪

 

(タジャ!リュ!ワシ!)

(タジャ!リュ!ワシ!)

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 広場に拍手と歓声が響き回った。ノエルの演奏に惹かれ人々とポケモンが集まったのだ。陽気な美少女が無邪気なポケモンたちとパフォーマンスをした。観客が集まるのは必然だった。

「ハ〜イ♪サンキュー!投げ銭はギターケースへお願いしま〜す

 何人かギターケースに小銭を投げ入れた。キャンディを入れる子どもや木の実を入れるポケモンもいた。

「みんな〜!ありがと〜

 ノエルはみんなに手を降り、紙幣を入れた大人には投げキッスをした。遠巻きに見ていた眼鏡の少年は呟いた。

「何やってるんだか……。」

 聞き覚えのあるギターの音がしたので来てみれば幼馴染が路上ライブをしている。呆れながらも嬉しそうな主人にポカブは首を傾げた。人混みでチェレンに気づかぬまま、ノエルは2曲目を歌い出した。

「あと3曲くらい歌うね!次は……【ヒトツノ世界】!」

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

【ヒトツノ世界】

 

嬉しいとき笑うのはなぜ?

悲しいとき泣くのはなぜ?

喜びも悲しみも分かち合う

私たち人間だから

同じ生き物だから

 

肌の色も瞳の色も毛の色も

関係ない関係ない

だって命は平等

心の目で見たい

あなたは誰?

 

世界は音楽で溢れている

音楽なしでも生きられるのに

喜びも悲しみも表現したい

歌って音を立て踊りたい

私たち生きてるから

 

国も言語も宗教も親も先祖も

構わない構わない

あなたはあなた

この身で感じたい

私を見て

 

どの国でも子どもは甘いものが好き

どの国でも花は希望と共に咲く

どの国でも酒とタバコは作られた

どの国でも生き物は愛し合う

 

NO MUSIC, NO LIFE.

NO LIFE, NO MUSIC.

NO YOU, NO LOVE.

NO LOVE, NO YOU.

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 2曲目は力強い歌だった。ツタージャモグリューワシボンはヘビメタのようにところどころ叫んでいた。観客は少女に圧倒された。彼女の声、瞳、ギター……全てに惹きつけられる。チェレンは最初の1曲だけ聴いてその場を去るつもりだったのに動けなかった。観客はぼーっとしたあと我に返り拍手をした。またギターケースに投げ銭が増えていく。

「みんなー!またありがとー!」

 水を飲んだあとノエルはみんなに声をかける。そんなノエルのライブに魅力された知り合いはチェレンだけではない。緑髪の青年もまた別の場所で彼女の歌に聴き入っていた。

 明るいポップな曲、力強くかっこいい曲に続きかわいい乙女な曲、魅惑の小悪魔な曲を披露した。いずれも好評でギターケースは予想より多くの金銭が貯まっていた。アンコールを求められ、ノエルは最後の曲を決めた。

「みんな〜!本当にありがと〜!!興奮しすぎたからちょっと落ち着かない?という訳で最後の曲は……【私ノ半身】!ちょっとしんみりするけど聴いてね〜!」

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

【私ノ半身】

 

誰から見ても

幸せなはずなのに

 

何か足りない

誰か足りない

満ち足りない

どうすればいいの?

 

友だちいるのに

いじめもないのに

ふとした瞬間

なぜか寂しくなる

 

ここは私の居場所?

ここにいてもいいの?

本当の家族って何?

 

私から見ても

十分なはずなのに

 

ご飯もベッドも

帰る家もあるのに

ふとした瞬間

なぜか泣きたくなる

 

何が足りない

君が足りない

物足りない

君はどこにいるの?

 

どこが君の居場所?

そこにいてもいいの?

本当の愛って何?

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 それまでの4曲とは異なるバラード。今まで歌った5曲はどれも系統が違ったが、最後の曲がこんなに心を揺さぶられるのはなぜだろう。

 チェレンの胸が痛む。いたたまれなくてその場を離れてしまった。ポカブもなぜか悲しい気がして主人の背を追った。

 最後の曲は投げ銭は少なかったがノエルは満足していた。興奮したまま解散した客が事故や事件を起きてしまうかもしれない。ライブ後に騒いだ人たちが過去にいたので、落ち着いた客を見てノエルは安心した。ポケモンたちに手伝ってもらいお金は巾着袋に、お菓子と木の実はジップ付のプラスチックバッグへ分けた。ギターケースとアンプを専用ケースにしまい帰ろうとしたら意外な人物と会った。

「あんた……聴いてたの?」

 長髪の美青年が物悲しそうに立っていた。

ポケモン小説『白黒遊戯』プラズマ・スキャンダル!その2

 プラズマ新聞。それは月に一度発刊されるプラズマ団だけが読めるニュース。任務の成果や七賢人のありがたいお言葉、教養コラム、N様の近況などが載せられている。

 それまでのプラズマ新聞は情報誌という側面が強かったが、今回のプラズマ新聞は一味違う。ゴシップ色が強くなった9月の新聞に下っ端団員たちはたちまち夢中になった。その気になる内容とは……

 

【敵だ!危険だ!謎の怪物現れる!!】

 10年前に発足し、5年前から徐々にポケモン解放活動を始めた我々プラズマ団。これまで愚かな人々からポケモンを解放するにあたり多少弊害があったものの、今月はイレギュラーな問題が目立つ。

 1つ目の事件は夢の跡地で起こった。ムンナムシャーナから夢の煙を手に入れようとした団員たちはボコボコになって帰ってきた。男と女の団員は身体中たんこぶ、痣、打撲跡で痛々しい姿になっていた。2人に何者かに襲われたか訊ねたが彼らは「茶色い化け物にやられた」としか言わなかった。大きな切り傷は見当たらなかったため、ノーマルポケモンか格闘ポケモンにやられたと我々は推測した。

 2つ目の事件は地下水脈の穴。3番道路で幼い少女からチラーミィを解放したのに取り返されてしまった。泥だらけになった4人の男たちは「黒髪の少年と茶色い悪魔にやられた」と言っていた。茶色い悪魔とは黒髪の少年のポケモンか?あと「ダンスでコケにされた」とも言っていたがどういう意味だろう……

 3つ目の事件はヤグルマの森。2つの隊がシッポウシティ博物館で化石を奪ったがジムリーダーのアロエと通りすがりのトレーナーたちによって奪い返されてしまった。団員たちは「森で野蛮な化け物に撹乱された」と言っていた。ここでも黒髪の少年と茶色い悪魔に妨害されたらしい。

 写真はないが団員たちの証言からこの3つの事件に同じ茶色い悪魔が関わっていることがわかった。複数人で戦っても勝てない茶色い悪魔とは果たしてどんなポケモンなのだろうか?なぜか遭遇した団員たちは詳しいことを話してくれないが、いずれ明らかになっていくだろう。

 

【スティーベン隊長ヘンタイ疑惑】

 みなさんはスティーベン隊長をご存じだろうか?プラズマ団の一部で密かに人気だった下っ端グループリーダーの1人、スティーベン隊長。小し悪人面だが責任感が強い。部下が失敗したら舌打ちするが適切な指示を出すだけで嫌味は言わない。注意するときは二人きりで落ち着いたトーンでよかった点と悪かった点を話し短く済ます。このように若手のホープとして評価されていたが、先日の任務で意外な面が発覚した。

 なんと……任務中にも関わらず黒い紐パンを握りしめていたというのだ。紐パンにうつつを抜かしてたためドラゴンの化石入手に失敗したのではないかと団員たちの間で囁かれている。それを目撃した女性団員は「きゃー!ヘンタイ!!」と叫んでいた。スティーベン隊長はそんな人ではないと弁護する団員もいる一方、ある男性団員は「隊長だけずるいです……。俺もギャルのパンティーがほしいです!」とインタビューで悔しそうに答えた。

 あの紐パンは隊長の恋人のものか?隊長がどこからか盗んだものか?あるいは隊長が履く趣味があるのか?……なぜ紐パンを持っていたか不明だが、スティーベン隊長が紐パンを握ったことと任務を失敗したということは事実である。

 

N様はクリスマスがお好き!?】

 最近、N様は一人言が多い。我々のような凡人が天才を理解しようとするなどおこがましいが、敬愛するお方を少しでも知りたいと思ってしまうのはエゴだろうか?

 プラズマ団の書庫を管理する者によると最近、N様は「ノエル……」「ピースメーカー……」と呟きながら本をめくっていると言う。このことから我々なりに推測してみた。

 ……ずばり!ノエルとはフランス語で「クリスマス」を意味する。そして我々がよく聞くノエルと言えばブッシュ・ド・ノエル……すなわちケーキだ。おそらくN様は「クリスマスの丸太」を意味するブッシュ・ド・ノエルを食べたいが、まだ12月ではないので食べられないと悩んでいるのだ!

 そしてもう1つの言葉「ピースメーカー」。文字通り「平和を作る人」という意味である。N様は平和な世界を目指しているのは容易に想像できるが、もしかして作品名のことかもしれない。そこで我々がインターネットでその言葉を検索した結果、いくつか該当する作品があった。

 まずアクション映画『ピースメーカー』。軍人と科学者が奪われた核兵器を取り戻す物語。次にアメリカのヒーロー漫画『ピースメーカー』。『ザ・スーサイド・スクワッド』と関連があり、ドラマにもなった。犠牲を出してでも平和のため戦う殺人者が主人公だ。

 日本でもなぜかアメリカ西部開拓時代を描くガンアクション漫画で同じ題名の物が存在する。他にも『新撰組異聞ピースメーカー』やその続編『ピースメーカー鐡』がある。こちらは昔のジョウトが舞台で日本らしい作品だ。シンセングミというクールな組織が活躍する物語のようだ。

 そこで我々は1つの結論に辿り着いた。きっとN様は……クリスマスプレゼントに「ピースメーカー」関連のグッズがほしいのだ!3か月後のクリスマスが待ちきれない!どれがN様が求めてる「ピースメーカー」かわからない。だが我々N様ファンクラブはN様を少しでも喜ばせるため「ピースメーカー」と名のつくものを色々買い集め、クリスマスケーキのブッシュ・ド・ノエルと一緒に捧げたのである!(中には日本のアニメ『機動警察パトレイバー』に登場する「ピースメーカー」というロボット玩具もあった。)

 気になるN様の反応は……実を言うと微妙だった。N様は我々が用意した物をしばらく眺めたあと「……ありがとう」とおっしゃった。そこには喜びも悲しみも見受けられなかった。しかし、我々はその一言で救われた気がした。我々はN様が望んだ物を用意できなかったようだ。空回りしたかもしれない。それでもN様は我々のプレゼントを拒否せず空いている部屋に置くことを許して下さった。N様はあいかわらず麗しい。そして寛容なのである。それでこそ王の器!こうして我々は今後もN様に忠誠を誓うと決意を強めた。

 

***

 

「なんなんだこれはーーー!?」

 オレはプラズマ新聞を縦に破った。しくじった。オレが報告書と紐パンで悩んでいる間にまさかあの事件が新聞に書かれていたとは……こんなことなら報告書に本当のことを書いてさっさと上に提出するべきだった。大変ですと慌てて新聞を持ってきたのはまともな部下のノーマンだった。

「すみません!隊長はヘンタイではないと弁護したのですが、噂は止められず……。」

……チッ。お前のせいじゃない。」

 仮に早めに報告書に真実を書いて提出してもおそらく結果は同じだ。もし先手を打っていればほんの少しだけ俺が信用されていたかもしれない。それだけだ。報告書は紐パンのことは書かずに提出してしまった。

 肝心の証拠はN様が持って行ってしまった。あのお方が紐パンをどうするか検討もつかない。ただ単に捨てるのか、七賢人に俺は悪くないと伝えてくれるのか……どちらでもない気がするのはなぜだろう?あの方が身に付けることだけは絶対ないという謎の信頼感だけはある。

「悪い……。俺の風評被害のせいでお前まで悪く言われるかもしれない。」

「隊長は悪くありません!隊長はノロマのノーマンと馬鹿にされた自分を差別しませんでした。わからないことも教えてくれるし、尊敬しています!」

「そうか……。」

 俺はブラック企業に勤めていたから不当な扱いをしたくないだけだ。そしたら俺をこき扱ったクソ上司と同じになっちまう。

「つーかオレ意外と人望あったんだな!?知ったときにはなくなってたって悲しすぎるすだろ!」

「スティーベン隊長!自分がいます!」

「ありがとな!」

 前に勤めていた職場では人もポケモンも規定の労働時間を超えて働かされていた。なのに残業代は払われない。十分な休息はない。寝不足と栄養不足と過労で意識が朦朧としていたオレは、外でプラズマ団の演説を聞いて人生が変わった。ヤケになって会社のポケモンを解放して逃げたのだ。そしてそのまま勢いで演説していたプラズマ団にそのことを話し、入団した。素晴らしいと褒められた。正しいことをしたと実感した。解放されたポケモンたちもオレに感謝してから逃げた。プラズマ団に入ったことは後悔してない。だが……

「あのクソアマ……大人を馬鹿にしやがって……!」

 あのノエルという少女……オレたちだけでなく他の団員たちの邪魔もしたのか。茶色い悪魔って絶対こいつだろ。きっと他の団員たちも女子高生にやられたなんて恥ずかしくて言えなかったんだろう。

「あのアマ人生舐めてやがる!スクールカーストのトップだから調子に乗ってんじゃねえのか!?リア充め!!」

 机を叩いた。ノーマンは複雑な顔でオレを見ている。気まずい思いをさせてしまった。

「とにかく……下がった評価は上げればいい。成果を出せば信頼は取り戻せる。オレの隊に所属してるせいで辛い思いをするかもしれない。もし別の隊に移動したかったら……。」

「嫌です!自分はここにいます!」

 ああ、よかった。味方がいるってこんなに嬉しいことなんだな。

「わかった。これからもよろしく頼む。」

「はい!」

 涙ぐむノーマンはさておき……。ドアから険しい顔でこちらの様子を伺うぽちゃ男は何しにきたんだ?前はギンギンしていた目はじとーっとなっている。

「おい、デブ……じゃなくてデイブ。」

「はい!」

 ドアから顔だけ出していたデイブは全身を出して敬礼した。

「お前インタビューで『俺もギャルのパンティーがほしいです!』って答えたな?」

「はい!答えました!!」

「いや、素直かっ!」

 こいつ社会でやってけないタイプだろ……

「隊長!提案があります!」

……なんだ?」

 一応聞いてやろう。

「あのノエルという少女をプラズマ団にスカウトしましょう!」

「なんだ?人生の先輩として社会の厳しさを教えてやるのか?」

「いえ、俺がノエル様の部下になって厳しくされたいです!!」

「お前ドMだな!?」

 なんで新入りのメスガキに大人のぽちゃ男が従うんだよ……。最近ため息ばかりだ。

「却下だ。また会ったら徹底的に倒してそいつのポケモンを解放する。二度とプラズマ団に逆らわないようにな。」

「ええ〜?」

 残念がるデイブと戸惑うノーマンを部屋から追い出す。

「ほら。もう少し休んだあと働け。」

「はい!」

「隊長〜!」

 インスタントコーヒーにお湯をそそぎながらあの女に勝つ算段を考えた。ノーマンの不安な気持ちがわかる……あの女、ノエル・ピースメーカーに勝つ未来が全く想像できない。ヤグルマの森ではポケモンは2匹しかいなかったが、今後は増えていくだろう。

「ノエル。ノエルか……ん?」

 今さらだが気づく。最近のN様の独り言って……あの女の名前じゃないか。

ポケモン小説『白黒遊戯』プラズマ・スキャンダル!その1

 ここはプラズマ団本部。ポケモンを解放するべくプラズマ団が日夜問わず活動している。トップの七賢人はもちろん下っ端たちも日々努力している。

「はぁ……。」

 小部屋で1人の団員がため息をつく。シッポウシティ博物館の任務で下っ端のグループリーダーを勤めていた男だ。伝説のポケモンと思われる化石を一時手に入れたものの、ヤグルマの森で野蛮な女に奪還されてしまった。森林戦で撹乱され惨敗。何の成果も上げられずノコノコ撤退することになった。

 いや、一応手に入れた物はある。だがこれを戦利品と言っていいか微妙である。彼は机に置いた物を複雑な顔で見る。そこには黒いうっすら透ける生地で作られた紐パンがあった。彼はポニーテールの少女に言われたことを思い出す。

「そんなにほしけりゃくれてやるわよ!!」

 奪われた化石の代わりに投げつけられた物がこれである。つい反射的にキャッチしてしまった。おかげで女の団員にヘンタイと言われ、あれ以来、他の女の団員たちにも白い目で見られるようになってしまった。

 報告書を書きながらパソコンの隣りにある紐パンをチラッと見る。前は逆三角。裏はTバック。……エロい。シンプルにエロい。これをあの少女が穿いていたのか?

 ダークブラウンのポニーテールの少女。歳は1516か?女子高生特有の最強感がある。スリムな体に健康的な肌。そして憎たらしいことにかわいいのだ。

 勝ち気な顔は自信で溢れている。「私かわいいですけど何か?」と余裕を感じる。絶世の美女ではないが不思議な魅力がある。

 もしあの紐パンを投げたのがブスな女だったら「誰がこんなもんいるかっ!」と地面に叩きつけていた。だがかわいかったので動揺してしまった。俺が紐パンを握りしめたままと気づいたのは撤退した後だった。

 パソコンの画面を睨む。どう報告すればいい?ありのまま起こったことを伝えるべきだろうか?化石を奪われたあとJKに紐パンを投げられたため動揺して負けた、と。証拠に紐パンも一緒に提出して……駄目だ。信じてもらえるか怪しい。仮に信じてもらえても情けない。

「はぁ……。」

 さっきからこの調子だ。入力しては削除し、ため息をつく。

 

ーコンコン。

 

 ノックが聞こえ俺は慌てて紐パンを引き出しにしまう。

「隊長、おつかれさまです。」

 部下の男が2人入ってきた。俺は隊長としての威厳を保つため背筋を伸ばす。

「任務で使う道具の在庫表です。」

「ご苦労。」

 部下の1人から紙を受け取る。報告だけなら1人で十分だ。なぜもう1人はついてきたのだろう?視線を向けたらぎょっとした。ぽっちゃりした部下は引き出しからはみ出た紐を凝視していた。

「隊長……その紐は……?」

 こいつストレートに訊きやがった。あの場にいた者ならこれが何なのかわかるはずだ。見て見ぬフリくらいしろ。

「あ……ああ。例の物だ。上に提出するかどうか迷ってる。」

 本当はすぐにでも手放したかったがそうはいかなかった。本部のゴミ箱に捨てたら俺が誰かの紐パンを盗んだか、俺が紐パンを履く趣味があると勘違いされてしまうかもしれない。やはり上には提出せず外に出たとき適当なゴミ箱に突っ込むべきだろうか?……つーかなんでこいつはさっきからずっと紐パンの紐をギンギンした目で見てんだ!?

「隊長……それ、見せてもらってもいいですか?」

「あ、ああ……。」

 下手に出すのを渋ると俺が紐パンに執着してると勘違いされちまう。俺は平静を装い紐パンを机の上に置いた。断じてぽっちゃり部下の眼力に気圧された訳じゃない……

 ぽっちゃり部下は紐パンを凝視した。……俺の顔を見たのは最初だけな気がする。こいつ紐パンしか目に入ってねえ……

「隊長……その紐パンどうするつもりですか?」

 こいつ堂々と紐パンって言いやがった。もう1人のまともそうな部下は気まずそうに俺を見る。

「上に報告書と一緒に提出するか迷ったが……信頼を失いそうだから捨てることにした。」

 うん。捨てる。マジで捨てる。絶対捨てる。こいつ見て即決したわ。

「隊長……オレに任せてくれませんか?」

 いや何を??

「オレが隊長の代わりに処理します!」

「別の物を処理するように聞こえるんだが!?」

「大丈夫です!ちゃんと再利用……じゃなくて捨てます!」

「俺にはお前がそれをReduce, Reuse, Recycle(減らす、再使用、再利用)する未来しか見えないんだが!?」

「隊長……なんて嫌らしいことを考えてるんですか!?見損ないました!」

「嫌らしいこと考えてるのはお前だろ!見損なったはこっちのセリフだ!!」

「ちゃんとオレの目を見て判断して下さい!」

「欲望で濁ってる!!」

 あの少女の目はあんなに真っ直ぐで澄んでいるというのに……

「オレをヘンタイと決めつけるなんて偏見です!」

「偏見じゃなくて事実だろう!!」

「隊長が紐パン持ってても宝の持ち腐れです!おれならもっと有効に使います!!」

「ついに本音を出しやがった!!」

 そいつは俺とおろおろする部下を横目に紐パンを奪い取った。

「うおおおおおお!!」

 ドアから出ようとするそいつを俺たちは咄嗟に止めた。別にあの少女に同情した訳じゃない。少女の紐パンをおかずにするのは人として間違ってると思っただけだ。

「やめろ!お前ヘンタイと呼ばれていいのか!?」

「うるさい!オレは自分の欲望に忠実に生きるんだ!」

「なんのためにプラズマ団に入ったんだ?!」

「そんなの忘れた!今のオレは紐パンのことしか考えられない……!」

「紐パンから離れろよ!!」

 ぽっちゃり部下をなんとか2人で取り押さえる。開いたドアの前で手足をバタつかせる3人の男の姿は滑稽かもしれない。

「2人とも落ち着いて下さいよ〜!」

 そう言った直後まともな部下はぽちゃ男に顔を殴られる。理不尽だ。俺がぽちゃ男の腕を後ろに拘束していると廊下で誰かが通りかかった。

……何をしている?」

 そのお方を見て俺たち3人は青ざめた。

「N様……っ!」

 カリスマを持つ長い緑髪の美青年を前に俺たちは反射的に片膝をつく。プラズマ団の王、N様。しかしこんな時でもぽちゃ男は紐パンを力強く握りしめていた。……執着しすぎだろ!

…………。」

 あろうことかN様の目にぽちゃ男の手からはみ出た紐パンの紐が映ってしまった。

「それは……?」

「これは紐パンです!」

 ぽちゃ男は堂々と答えた。いや、なんで馬鹿正直に答えるんだよ?!N様のような高貴なお方に紐パンという低俗(?)な物を見せてしまい申し訳ない。ぽちゃ男が黙っていれば「これは眼帯です」と誤魔化せたかもしれないのに。

「紐パン……?」

 浮世離れしたカリスマ王は紐パンをご存知ないようだ。正直、今からでも「眼帯です」と誤魔化そうか迷った。ぽちゃ男が余計なことを言う前に話題をそらすことにした。

「ある少女にヤグルマの森で投げつけられました。しかし我々には不要な物なので処分することにしました。」

……ノエル・ピースメーカー?」

 話題をそらすことに成功したようだ。N様の関心は少女に移った。

「いえ、名前までは……。あ、でもそんな名前で呼ばれてたような……。」

 ヤグルマの森での出来事を思い出していたらN様が手を差し出した。

「それ……僕が預かる。」

「えっ!?」

 こんな卑猥な物をN様の手に!?N様は紐パンを何に使う物かわからないはずだ。何を考えているか表情から読み取ろうとしたが、いつも無表情なのでわからない。少なくともぽちゃ男と違って汚らわしいことはしないはずだ。

 俺たちのような下っ端が王に逆らえるはずがない。ぽちゃ男は渋々それをN様に渡した。N様はそれをそっとハンカチで包みポケットにしまった。そして何も言わずに去ってしまった。

【鬼滅コスでボドゲ!】 第1回 本の虫

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 『鬼滅の刃』の公式スピンオフ『中高一貫!!キメツ学園』のコスプレでボードゲーム『本の虫』を遊びましょう!いっしょに動画+写真撮影を楽しみませんか?動画は編集してYoutubeにアップ!ゲームマスターは主催者である私、星乃ミライが胡蝶しのぶに扮して担当します!

本の虫

本の虫

  • メディア: おもちゃ&ホビー

  ゲーム『本の虫』で遊べるのは最大4人まで。私(星乃ミライ=しのぶさん)はゲームマスターのためプレイヤーに含まれません。本イベントでは誰か1人負けるたびに新しいプレイヤーが参戦します。最後まで勝ち残るのは果たして誰か!?

 プレイ動画の撮影中、カメラの前で出番がないコスプレイヤーさんは動画撮影の補助や写真撮影をお願いします。飲食も一応OKですがゴミは持ち帰りましょう。

 アクセス 

https://drive.google.com/file/d/0Bw4ZXNtOhlOlWDE2dDFXaDBTMXc/view

場所:東京プチフールスタジオ 日本橋店(最寄駅はJR馬喰町駅 2番出口)
開催候補日:6~8月の土日祝日

(参加者と日時が確定次第すぐ予約します。上記候補日以外で開催する可能性あり)。
時間:13~17時(4時間)※プレイ動画の撮影は約1時間で終わります
料金:12,000円 ÷ 8人 = 1人 1,500円
募集キャラ(7人):

・炭治郎    → のぼる さん (保留)

・善逸     → leo さん (保留)

・伊之助

・禰豆子    → 日常に生きるぽにょ さん

・カナヲ

・アオイ    → 千歳 さん

・童磨

 撮影する場所は【東京プチフールスタジオ 日本橋店】!動画の撮影に利用するのは[アンティーク調]エリア。その他[ロココ調][姫部屋][カフェ][壁一面窓][エレガントホワイト][フラワーウォール][ガーデン]エリアがあります。

  写真を撮るなら……『キメツ学園』の制服でカフェでお茶しちゃう?それとも現代の私服でガーデンパーティ?ロリータでロココ調にタイムスリップ!?姫部屋で女子会もいいよね♡[アンティーク調]エリアは動画撮影の前と後に写真を撮る予定です。

 みんなで集合写真も良いし、かまぼこ隊や蝶屋敷メンバーで仲良しトリオ撮影、ああっ……カップリング写真もいいかも!!(≧∀≦)え?BL写真?ん~……まあ、いいんじゃない?(笑)お互い合意なら!もちろん1人で撮影もOK!みなさんの理想の写真を実現させましょう!

 ん?ちょっとした動画も取りたい?TikTok?どうぞご自由に☆時間が余ったら自由行動♪もちろん休憩もはさみましょう(^^)

 飲食OKだけど、スタジオを汚さないように!汚したらきれいにしましょう。

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★参加条件★
・マナーとルールを守れる
・相手を思いやることができる
・常識がある
SNSなどに載せられてもOK
・未成年者がいてもOK(主催者は社会人)
・当日までにキメツ学園の制服を用意できる
・ウィッグを被ってメイクする
カラコンをつける
・キャラになりきって演技できる(ヘタでもOK!)
・参加料金を払える
・体調不良・大事な急用以外でキャンセルしない
スマホなどの連絡手段がある
・LINEグループに入れる

ボードゲーム『本の虫』の公式PV(物語)

youtu.be

↓遊び方(画像と説明文のみを見たい方はこちら

www.youtube.com

↓実際に遊んでいる動画

www.youtube.com

 質問がある方はTwitterでコメントかメッセージを書いてください。

 追伸:もし上記のキャラ以外でどうしても参加したいという方が多い場合は追加で募集するかも……?

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ポケモン小説『海のプラチナ』第31.5話 おかっぱの少女

―アタシはお化けが大嫌いだ。

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 ホホホホホ!アタシはハクタイジムリーダーのナタネ!弱冠16歳にしてシンオウ地方の草ポケモンのエキスパートよ。ポケモントレーナーの中でも特別な立場にいるアタシだけど悩みがある。今、アタシはハクタイの森の出口の近くにいる。木の壁の向こう側をちらりと見るとアタシは本日何度目になるかわからないため息をついた。

 ハクタイの森には苔で覆われた不思議な岩以外に名物スポットがある。その名も『森の洋館』。ハクタイの森一番のドッキリスポットで苔の岩より有名だった。ゴーストポケモンが出没する森の洋館は肝試しに最適だけど地元の人ですら近づかない。アタシだってそんな恐いところに用がなければ行きたくない。だけど夜な夜な聞こえてくる騒音、怪しい人影、果てには幽霊が出るとハクタイシティの人たちから苦情がきた。最近怪しい集団が各地で現れているということもありポケモン理事会はジムリーダーであるアタシに任務を与えた。

『森の洋館の騒ぎの原因を調査せよ』

 ハクタイの森はハクタイシティに隣接しており、ハクタイシティジムリーダーであるアタシの管轄だった。ハクタイシティで生まれ育ち、ここの地理に詳しいアタシが適任とされた。尤もな話だけど…………なんでアタシなのよーーー!!アタシお化けが苦手なのに!大体お化け関連ならゴーストポケモン使いであるメリッサさんが適任じゃない!同じジムリーダーでアタシより強いしお化けなんて恐くないし霊感あるしアタシより適任よ!そりゃヨスガシティからここに来るにはテンガン山を潜らなきゃいけないけどさ……。

「…………ロズレイド、良いこと思いついたわ」
「ロズ?」

 アタシはお気に入りのポケモンロズレイドに話しかけた。両手に薔薇のブーケが生えた薔薇の戦士は一番アタシと付き合いの長いポケモンだった。

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「洋館には入らず帰りましょ」
「ロズッ!?」 

 ロズレイドの目が一瞬大きくなった。こうなることはわかっていた。アタシは話を続けた。

「森の洋館に行ったことにすればいいのよ。報告書を提出して何もありませんでしたって言えばどうかしら?もしくはとんでもないポケモンが出たとか……。そうすれば理事会はアタシの手には負えないって判断してメリッサさんを向かわせると思うの」

 ロズレイドは青い薔薇が咲いているほうの手を頭を押さえて考えた。しばらくすると両手を下ろして首を素早く横に振った。

「え~!?いいじゃない!それにロズレイドも本当は恐いんでしょ?」
「ロッ……!」

 ロズレイドは肩を上げた。図星ね。ロズレイドはアタシに似てうっかりやだもの。何を考えているかアタシには筒抜けだった。 

「さ~て、帰ろっか」

 アタシはハクタイシティへ戻ろうとしたけどロズレイドがアタシのマントを引っぱった。その目は必死で逃げちゃ駄目だと訴えていた。 

「いいから……アタシを……帰らせて……!」 

 ロズレイドはアタシのマントを放さない。しまいにはアタシたちはマントを綱引きのように引っ張り合っていた。

「あ~ん、もう!行きたければ1匹で行けばいいじゃない!」

 マントを脱いで逃げようかと思った。だけど横から男の子の声が聞こえてきた。

「なあ」
「ミギャーー!!」

 で、出たーー!!お化けーーー!!ロズレイドの手が離れた隙に逃げようとしたけど再びマントを引っぱられた。足が進まなーーい!

「おまえがハクタイシティのジムリーダーか?」

 お化けじゃない……?恐る恐る振り返ったらアタシのマントを掴んでいたのはアタシより背が低い金髪の少年だった。くせっけが強くて髪の毛をとかしているのか訊きたくなるような変な髪形だった。オレンジと黄色の横じまの服はどことなく水兵を連想させた。

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「そ、そうだけど……」

 よかった。お化けじゃなかった。少し落ち着きを取り戻したアタシはほっと息をついた。もっとジムリーダーらしくビシッと決めなきゃ!

「オレ、フタバタウンのジュン!さっきジム戦しに行ったらジムリーダーは任務で森の洋館に向かったって言ったから来たんだけど」

 ジム挑戦者……!?しめた!これで町に戻る理由が出来た!ジムリーダーとしてジム挑戦者を待たせるわけにはいかない。緊急事態でもない限りジム戦を優先させるべきよね! 

「ええ、そうよ。でもアナタがどうしてもジム戦したいなら仕方ないわよね。さっそく町に戻ってジム戦を……」
「でもおまえ任務があんだろ?そっちを優先しろよ。なんだったらオレが手伝ってやるよ!」
「へ?」 

 違う違うちがーーう!!そんな親切いらないって!アタシは森の洋館には行きたくないの! 

「この木が一番斬りやすそうだな。ナエトル!」
「ルー!」

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 影が薄かったのかそのポケモンの存在に気がつかなかった。ジュンという少年の足元には若葉ポケモンナエトルがいた。茶色い甲羅を背負った陸亀の頭には立派な双葉がついている。アタシの持っているナエトルと同じ。

「『はっぱカッター』!」

―シュッ。

 ジュンのナエトルは頭についている双葉を放った。はっぱは森の洋館への道を塞ぐ木に当たったけどびくともしなかった。 

「なんだってんだよー!」 

 あっけにとられるジュンを見てアタシはやれやれと思った。

「これだから初心者は……。いい?この細くて長い木はジャマギって言うの。それなりに硬くて普通に斬ってもすぐ再生しちゃう厄介な木なの。確実に斬るには秘伝技の『居合い斬り』を使わないと無理よ」 

 アタシは鼻をふふんと鳴らした。これでジムリーダーらしく振舞えたわね。

「おまえは斬れるのか?」
「当然よ。ロズレイド!」
「ロズ!」 

 ロズレイドは軽い身のこなしで青いブーケを振った。 

―スパッ。

 沈黙を遮るようにジャマギが倒れた。さすが木を斬ることに特化した技だわ。こんなにきれいに斬れるだなんて。

「へえ~。すげーな。んじゃさっそく行くか!」
「ル~♪」
「え?」

 し、しまった……。かっこつけたくてついジャマギを斬っちゃったわ!

「いやーーー!洋館には行きたくなーーい!!」

 嫌がるアタシをジュンは引っぱった。後ろはロズレイドに押されている。

ロズレイドーーー!アタシを裏切ったわねーー!」

 ロズレイドは口笛を吹いていた。アタシは迷惑なお人好しと裏切り者のロズレイドによって泣く泣く洋館の中へと引きずり込まれた。

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 ***

 

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  ああ、どうしてこんなことになったんだろう。アタシはただコンテストに出場するほど暇なメリッサさんに仕事をあげようとしただけなのに。洋館は昔からある古い建物で外も中もクラシックだった。由緒ある屋敷は暗くて汚れていたので返ってホラー度を増していた。やめてよ……洋式の建物も和式の建物も古くて幽霊が出そうで苦手なのに!

「お~い。階段上がるぞ~」

 アタシを屋敷へと引きずり込んだ張本人はナエトルと一緒にのん気に進んでいる。ロズレイドはアタシを洋館へと押したくせに今はアタシの脚にくっついている。ああん、もう!やっぱり建物もインテリアもモダンが一番よ!幽霊が最も似合わない様式だもん。日本人形とフランス人形はきれいだけど不気味で嫌い!

「わ、わかったわよ!」

 アタシはしぶしぶ階段を上がった。ロズレイドが脚にしがみついているせいで歩きにくい。もう……なんでジュンは平気なのかしら。

 階段を上りきったら大きな影が動いた。驚いて離れようとしたら影はアタシの動きに呼応するように動いた。

「ロズーーー!!」
「キャアアアア!!お化けーーー!!」

 アタシはとっさにジュンに飛びついた。影はバタバタ動いている。

「守って!アタシを守ってよーー!!」
「落ちつけ!それお前の影だぞ!」

 ジュンくんはアタシを無理矢理振り払った。近くにいる人がジュンだけだったのでつい飛びついてしまった。ロズレイドはアタシと同じくらいビビッてたしアタシより小さいから頼る気がしなかった。

「さっさと先行こうぜ。探検はまだ始まったばかりだー!」

 アタシとは180度も違うテンションでジュンは意気揚々と進んだ。温度差の激しいアタシの苦労もまだ始まったばかりだった。

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 ベランダみたいな廊下を抜けるといくつものドアが並んでいた。正方形の木を並べて作られた床は何箇所か剥げている。ジュンは一番近くにあったドアを開けた。

「ここは物置だな」

 部屋にはイスが積み重なり本棚や箱が置いてあった。ポケモンも人もいないことを確認するとアタシたちは部屋を出た。あっさりドアを開けてあっさり閉めるジュン。恐いもの知らずなジュンくんがうらやましい。アタシがドアを開けるとしたらすんごく時間がかかるだろうし閉めるときは大きな音を立ててしまうだろう。

 たぶんこの廊下には個室が集まっている。ホテルみたいに廊下にドアがたくさん並んでいるから間違いない。次の部屋に向かおうとしたら何の前触れもなくアタシのうなじがひんやりした。アタシはダッシュでジュン目掛けてダイブした。

「ひいいいいい!お化けに触られたーーー!」
「ロズーーー!?」
「ただの水だろ!」
「ルー」

 ナエトルロズレイドに優しく話しかけた。「大丈夫だよ」と言っているのだろうか。それに引き換えジュンは不機嫌だった。

「オレにくっつくな!」
「そんなこと言われても……」

 アタシだって本来こんな好みじゃない少年にくっつきたくない。でも恐いから仕方ないじゃない。

「まったく。本当におまえジムリーダーか?」

 ジュンくんは横を向いていた顔を正面に戻し、思い息を一気に吐いた。うう……あきれられてる……。

「そのロズレイドもなんだか頼りないし……」

 そう言ってアタシの足元にいるロズレイドを見ようとした彼の顔を見て絶句した。彼の顔があるべき所には紫色のガスに覆われた黒い球体があった。異常に白い部分が大きすぎる半円の眼と大きな口から覗く白い牙。彼の金色の髪もオレンジ色の瞳も見えない。彼の面影は0だった。

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「お化けーーーー!!」
「へ?」

 アタシは顔がまるっきり変わったジュンを平手打ちして胴体を蹴った。眼をつぶっていたけど手応えがあった。

「なんだってんだよー!」

 変わった叫び声を聞いてアタシは我に返った。ジュンの顔は元に戻っていた。あ、あれ……?よく考えたらさっきの顔はガス状ポケモンのゴース。ゴーストタイプのポケモンはほとんどの物体をすり抜けるからそれを利用してジュンの顔に…………しまった!

「ご、ごめん!ゴーストポケモンのイタズラだったみたい……」
「なんだってんだよー!ポケモンのくせにオレを盾にしたのか?許さねー!」

 そう言い終わったと同時にどこからかピアノの音が聞こえてきた。廊下の奥から聞こえてくる。ピアノの音だけでなく歌声まで聞こえてきた。

―ラ~……ラ・ラ~ララ~♪

「ひいいいいいい!」
「今度はピアノで恐がらせようっていうのか?冗談じゃないぜ!行くぞ!ナエトル!」
「ルー!」

 だからどうしてこの人たちは平気なのーー?!さっき歩いた道に引き返そうとしたら手首を掴まれた。アタシも直行するのーーー!?

「うおおおおおおおおおお!!」
「いやあああああああああ!!」

 全く異なる意味合いで叫びながらアタシたちは床を疾走した。

―ラ……ラ・ラ~ララ~♪ラ~ラ……ララ~♪ 

 ピアノと歌声は奥の部屋から聞こえてくる。

「ここだ!」

―バンッ。

 ジュンは勢いよくドアを開けた。ピアノと歌声のコラボレーションは止まらない。

「やい!おまえか!?さっきオレたちにイタズラしたのは?!」
「ムウ?」

 怪しく光っていたピアノはその輝きを失った。わかめのようにヒラヒラした濃藍の頭部に眠そうな赤色の瞳。首には半透明の赤紫色のビーダマのようなものがネックレスみたいにくっついていた。首から下には何もない。濃藍の生首と言ってもいい。

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「ムウ。ムウムム~ム。ムムムムウマ。ム~ムム~ムム?」
「ミギャーーーーーーーーー!!」
「ロズーーーーー!!」

 夜泣きポケモンムウマだ!メリッサさんがムウマの進化系のムウマージを持っているから知ってる。ムウマージは三角帽子にローブを羽織っているような姿だから恐くないけどムウマは苦手!だって胴体がないじゃない!

 アタシは逃げようとしたけどマントを掴まれた。

「おい!待てよナタネ!オレにイタズラをしたのはこいつか?」

「違うわよーーー!」

 首を絞めないように首下にあるマントをひっぱりひたすら脚を動かしたけどジュンから逃れられない。年下なのに力が強い。

「そうか。わりぃ。ポケモン違いだった」
「ムウ~」
「ル~」 

 そう言うと丁寧にドアを閉めた。 

「礼儀正しいゴーストポケモンもいるんだな」
「イタズラ好きだろうが礼儀正しいだろうがゴーストポケモンはゴーストポケモンよ!」
「まあな」

 アタシはため息をつくとジュンの服の裾を掴んだ。腕を組んだら怒るだろうし好きじゃない男の子の腕を組むのはもうやめようと思った。

「オレにくっつくなよ!ヒカリ以外の女にくっつかれてもうれしくないっつーの!つーかさっきからヒカリみたいにギャーギャー騒ぐなよ!迷惑なんだよ!」

 ついにジュンが我慢できなくなって手を振りほどかれた。いきなりキレられても困る。しかも話の内容が見えない。

「わ、わかったわよ。ごめんってば!……でもヒカリって誰よ?アナタの友だち?」

 アタシの問いにジュンは腕を組んだ。さっきまではあんなに怒っていたのに。

「ヒカリはオレの自慢の友だちであり幼馴染であり妹でもあり家族でもある!頭いいし顔も……かわいい部類に入るのか?そういえばヒカリよりかわいい女って見たことないな」

 ジュンは得意げに答えた。よくわからないけどジュンにとってヒカリはよっぽど大切な人なんだ……。

「でもあいつ方向音痴でお化けが苦手なんだよな~」
「その子のことがとっても好きなのね」
「もちろんだ!オレの母ちゃんと同じくらい……ん?母ちゃんよりも好きか?」

 アタシの口から笑いが漏れた。正直だな。それでいてどこまでも真っ直ぐ。うらやましい。

「まあ、いいや。母ちゃんはダディが守ってくれるはずだからな。ヒカリはオレが守る!誰よりも強くなってヒカリを守るんだ!」
「ふ~ん……」

 だからジュンは何も恐くないのかな?ヒカリという女の子を守りたいから。

「おまえは好きなやついないのか?」
「いるわよ。アタシが好きなのは……」

 同性の親友のモミを思い浮かべようとしてアタシははっとした。

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 モミの名前を言おうとしたのに頭に浮かんだのは赤茶色の頭にヘルメットを被ったあの人だった。

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 な、なんであの人のことを思い浮かべるのよ?アタシと彼はただのジムリーダー仲間なのに!

「ひ……秘密!」
「なんだよ?オレの知ってるやつか?」

 口が勝手に開いたけど何も言わなかった。知ってるどころかついこの前ジュンも戦ったばかりのはずだ。

「い、いいから秘密なの!」
「そうか」

 ここの廊下を出て階段へと通じる廊下に出た。

「まっさきに2階に上がったけどそういえば下の階にまだ行ってない場所があったな。そっち行こうぜ」

 ジュンとナエトルは先に歩いた。アタシとロズレイドもジュンに続いた。不思議と恐くなかった。さっき怒られたりジュンの好きな人の話を聞いたりしたせいだろうか。さっきより落ち着いて洋館を歩くことができるようになった。

 

***

 

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 アタシはまだ開けていないドアを開けた。今まで見た部屋と比べて広い部屋だった。真ん中にはどうやってここまで運んだのかと思うくらい大きなセミダブルのベッドが二つ並んでいた。たぶんこの館の主人と奥さんが使っていた部屋だ。部屋の隅には本棚が2個づつ置いてある。ゴミ箱に化粧台やタンスが置いてあるけどどれも埃を被っている。ドアがついている壁の隅の床はかなり剥げている。この洋館ってどれくらい放って置かれてるのかしら?

「こっちの部屋にはテレビとゴミ箱しかないぞー」

 ジュンが隣りの部屋の様子を伝えてくれた。アタシもお返しに見たばかりの部屋の内部を教えた。

「こっちは大きなベッドと家具があるだけよ」
「じゃあ下の階に戻るか」

 今まで行った道を戻りながらアタシは考えた。この洋館に入ってからゴースが脅かしたりムウマがピアノを弾いたりしていたけど彼らが騒音の原因かしら?でもゴースの脅かしは脅かす人がいなければ叫び声を聞くことができない。いくら洋館が森の出口の近くにあるからってムウマのピアノと歌声が町に届くとは思えない。

「なにだまりこんでいるんだ?」
「考え事よ。森の洋館の騒ぎの原因を突き止めにきたんだから」
「さっきのポケモンたちは違うよな。オレたち以外の人間もいなかったし」

 洋館に入ってから人っ子一人見当たらない。ゴーストポケモンはいても人間の幽霊はいないみたい。……ふう。最近噂になっている怪しい集団とは無関係みたいね。

「着いたぜ」

 個室が並んだ廊下を出て階段を下った所には玄関があった。両脇にある2つの階段を無視して玄関から真正面に進めばドアがある。ドアの左前には銀のポケモン銅像がある。

「この先にはなにがあんだろうな」
ダイニングルームじゃない?」

 ジュンがドアを開くとビンゴ!そこには長いテーブルと大量の椅子が置いてあった。こんなに長いテーブルを囲って食事をしていただなんてセレブね。

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「……?」

 だけどおかしい。なぜこの部屋はこんなに明るいんだろう。まるでこの部屋だけ電気が通っているようだった。テーブルの上にはいくつものろうそく立てが置いてあるけどどのろうそくも火はついていない。

―ウィーーン。

「「!?」」

 機械的な音がした。アタシとジュンが音のするほうを見たときにはロズレイドナエトルは身構えていた。なにか得体の知れないものが来る。そんな予感がした。ダイニングルームの横にある壁の向こう側から出てきたのは赤い芝刈り機だった。

「な、なんで芝刈り機が勝手に……」
「知らねーよ」

―ブルルンッ。

「「!?」」

―ブルルルルルルルルッ!

 芝刈り機はスイッチがオンになったように音を立てアタシたちに向かって爆走してきた。

「キャーーーー!!」
「おわーーーっ!!」

 アタシたちは慌てて逃げた。戦闘体勢に入っていたロズレイドナエトルまで逃げ出した。だって芝刈り機よ芝刈り機!あんなのに体当たりされたら草ポケモンたちはバラバラにされるしアタシとジュンも傷だらけに…………てキャーーー!!想像するだけで恐ろしいわ!アタシたち人間も五体満足でいられるかどうかもわからない。バラバラ死体は免れても指の2、3本失いかねないわ!

「なんだよあれ!?ポケモンか?」
「知らないわよーー!」

 せっかく洋館が恐くなくなったのに恐怖が戻ってきた。恐い……逃げたい……!アタシはダイニングルームのドアノブに手をかけた。右へ左へとノブを回したけど開かない……!

「駄目!開かないわ!」
「なんだってんだよー!」

―ブルルルルルッ。

 芝刈り機はアタシたちを追いかけるのをやめない。アタシたちはテーブルの周りを何回も何回も周った。

「ちきしょー!ポケモンチャンピオンになる男をなめるな!『はっぱカッター』!」
「ルーー!」

 ナエトルは頭を振ってはっぱを飛ばした。頭の上についた枝からははっぱが生えては飛ばされた。こうしちゃいられない。アタシも頑張らなくちゃ!

ロズレイド!『マジカルリーフ』!」
「ロズレイッ!」

 ロズレイドは両手を構えてカラフルなはっぱを何枚も発射した。『マジカルリーフ』は『はっぱカッター』より少し威力が高い技。『はっぱカッター』が威力55で急所に当たりやすい技なら『マジカルリーフ』は威力60で必ず命中する技。相手を仕留めるときや確実にダメージを与えるときに役に立つ技だ。芝刈り機に『はっぱカッター』と『マジカルリーフ』が届く寸前芝刈り機に異変が起きた。赤かった芝刈り機がオレンジ色に染まり黄緑色の光を纏った。車輪の間にある装甲に黄緑色の目とギザギザの歯が現れた。ええっ!?

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「キヒヒ♪」
「ミギャーー!!」

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 芝刈り機が笑った次の瞬間、芝刈り機の刃のついている部分から大量のはっぱが出てきた。ナエトルロズレイドが放ったはっぱより10倍……いや20倍の量のはっぱがじゃんじゃんじゃん吹き荒れた。この技はまさか……!

「テーブルの下に隠れて!」
「えっ?」
「ロズッ!」
「ルー!?」

 アタシはジュンを引っぱりロズレイドナエトルをテーブルの下へ押し込めた。テーブルクロスの敷かれたテーブルの下だと様子は見えないけど音でわかる。大量のはっぱがダイニングルーム内を舞いなにかにぶつかったり刺さったりする音が聞こえた。倒れるろうそく立て。割れる食器。傷つく椅子。刺される壁。こんなに大量のはっぱを一度に噴出して攻撃する技なんて一つしかない。

 草タイプの技で2番目に強い技…………『リーフストーム』!その威力は140。命中率は90%。周りを椅子で覆われたテーブルの下に隠れていてもはっぱが隙間をくぐりテーブルクロスを引き裂いて何十枚と舞い込んでくる。テーブルの表面を貫いてとがったはっぱが食い込むのを見てゾッとした。体中に痛みが走った気がするけどどこを切られたのかわからない。

「……おさまったのか?」

 音が静まりはっぱの嵐が止んだことを確認するようにジュンが話しかけてきた。だけどアタシはジュンの問いに答えず代わりにジュンを反対側に蹴飛ばした。

「おわっ!」

―バキャーーン!!

 アタシの直感が当たった。さっきまでジュンがいた場所に芝刈り機が突っ込んできた。アタシは椅子をどけてテーブルの下を出た。

「そこから出て!」

 テーブルの下に隠れている間冷静さを取り戻した。アタシは距離を取り芝刈り機をどうやっつけるか対策を練った。おそらくこの芝刈り機はポケモンだ。その外見からタイプはおそらく鋼・草。もし鋼と草の両方の属性を持つとしたらこいつの弱点は炎と地面。水タイプの技も効くかもしれない。

「最悪……」

 アタシは草タイプ専門のトレーナーだ。草タイプの天敵の炎タイプも草タイプの格好の獲物となる地面ポケモンや水ポケモンを持っているはずがない。

「ジュン!そいつはおそらく鋼・草タイプのポケモンよ!炎か地面タイプの技を使えるポケモンは持っている?」
ポニータなら!」

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 言うが早いがジュンの前に火の馬ポケモンポニータが現れた。しめた!鋼タイプと草タイプの共通の弱点である炎タイプなら相手に4倍のダメージを与えることができる。

「『火の粉』!」
「ヒヒーン!」

 ポニータは燃えるたてがみを揺らしながら口から炎を吐いた。贅沢を言うともっと威力の高い『火炎放射』や『大文字』で攻めたいところだけどレベルが低いから仕方がない。おそらくジュンのポケモンはレベル20未満だわ。アタシのロズレイドはレベル22。残りの2匹のポケモンはレベル20。相手のレベルはわからない。たとえ同レベルでも強力な技を使うから油断できない。

 ポニータが履いた火の玉が当たり芝刈り機は動きを止めた。えっ?そんなあっさり……。オレンジ色だった装甲は赤に戻り緑色の光も失われていた。

「やったー!オレたちの勝ちだー!」
「ブッヒヒーン!」
「ルー♪」

 ジュンとポニータナエトルは勝利の雄叫びを上げた。……おかしい。おかしすぎる。あんなにアタシたちをしつこく追い回した芝刈り機がそんな簡単にやられるはずがない。アタシたちの状況を把握しようと頭を回転させたらジュンがポケモンもろとも壁に押しやられた。彼らを襲ったのは大量の水。

「なんだってんだよー!……ってポニータ!?」

 残念なことにポニータはびしょ濡れでぐったりしていた。自慢の炎のたてがみもコンロの弱火なみに頼りない。そのポニータは戦闘不能だわ。

 アタシは水が飛んできた方向を見た。そこにはオレンジ色の洗濯機があった。コインランドリーで見かける丸い窓のついた洗濯機の上には角が生えている。虚ろに笑っている顔には見覚えがあった。

「さっきの芝刈り機……?」

 芝刈り機をチラッと見たけど動く気配がない。アタシたちの前に新手の敵が現れた。

 

***

 

 なにもかもメチャクチャだった。芝刈り機が襲ってきたと思ったら今度は洗濯機が動き出した。青く光る冷蔵庫の両脇からアルファベットの「A」の形をした光が手のように伸びている。片方の手に掴まれているのは本体と繋がっているホース。ホースからは水が音を立て床に落ちていた。

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―ピチョン。ピチョン。

 目の前で起きた光景を頭が受け付けない。さっきの技は水の量と威力から推測すると『ハイドロポンプ』。数年前新たな技が発見されるまで水タイプの技で最強と言われていた技。

「水タイプには草タイプ!ナエトル、『宿り木の種』!」
「ルー!」

 ジュンはポニータをボールに戻すと再び戦闘モードに入った。切り替えが早い。アタシも見習わなくちゃ!おそらく鋼・水と思われるポケモンに草タイプの技が通じるかどうかわからないけど試してみなくちゃわからない。

ロズレイド!『蔓の鞭』で拘束して!」
「ローッ!」

 『宿り木の種』は急速に成長して洗濯機に絡みついた。それに続いてロズレイドの手から伸びた2本の蔓《つる》が洗濯機をぐるぐる巻きにした。洗濯機は手を動かしたり窓のついた扉を開けようとしたけど何重もの蔓に縛られているから動けない。やがて洗濯機は動くのをやめて白くなった。

「えっ?」
「なにっ!?」

 芝刈り機と同じ。動きが止まると同時にオレンジ色から違う色に変わった。……おかしい。何かが変だ。何か大事なことを見逃している気がする。

―ゴォッ。

 灼熱の光線がアタシの横を通った。アタシには当たらなかったけど熱光線は洗濯機を拘束し続けていたロズレイドに直撃した。

ロズレイドオオオオオオ!!」

 ロズレイドは黒焦げになりならがらも立っていた。蔓が焼けて己の体を支えるものがなくなったロズレイドは倒れた。音もほとんど立てなかった。

「よくもロズレイドをっ!」

 熱い液体が頬を伝った。ロズレイドはアタシと一番仲がよく一番頼りになるポケモンだった。それがあっさり一撃でやられたのだ。悲しさより怒りと悔しさが強かった。アタシは熱光線……『オーバーヒート』を放ったポケモンを睨みつけた。

 

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 攻撃してきたのはオーブントースター……もしくは電子レンジ。角が生えた電子レンジは赤く光りカニのようなハサミが2本飛び出ていた。電子レンジは挑発するようにハサミを鳴らした。
でも次のポケモンを出してもさっきのように燃やされるかもしれない。ロズレイドを戻してはみたけど残りのボールに手を付けられなかった。

「火には水!出番だ、キャモメ!」
「キュエーッ!」

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 アタシが迷っている間にジュンは新たなポケモンを出した。ポニータが戦闘不能になったのにその顔には笑みを浮かべていた。

「芝刈り機に洗濯機に電子レンジか……おもしれー!おまえを捕獲して母ちゃんにプレゼントしてやるぜ!」

 先程の怒りも悲しみも失せてアタシはツッコミを入れた。

「いや、お母さんに迷惑だから」

 電子レンジは先程にも増して赤くなった。また『オーバーヒート』が来る……!

「避けて!」
「おう!」

 電子レンジは扉を開けた。フルパワーで放たれる『オーバーヒート』は反動で特殊攻撃が下がるけど最初の2発は並みの技を一蹴する。キャモメはアタシたちの期待に応え体を回転させて『オーバーヒート』を避けた。

「『水鉄砲』!」

 洗濯機が放った『ハイドロポンプ』と比べて弱々しいけど仕方がない。『水鉄砲』は電子レンジの顔に命中した。水を浴びて壊れたのか電子レンジから小さな火花が出た。

「やったか!?」
「いえ……まだよ!チェリンボ!」
「チェリー!」

 不揃いの実がついた通常のさくらんぼより100倍大きいさくらんポケモンチェリンボが高い声で鳴いた。

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 あのポケモンの行動が大体わかってきた。電気製品が次々に動いてくるところを見るとまだ別の電気製品が動き出すに違いない。他にどんな電化製品があるかわからないけどどの家にもある電気製品といえば冷蔵庫だ。アタシは電子レンジが現れた場所へチェリンボと一緒に走った。壁で区切られた部屋はキッチンだった。そしてそこに必ずある電気製品といえば……。

チェリンボ!あの冷蔵庫に『種マシンガン』!」
「リーーッ!」

 地についた大きな赤い実の口から黄色い種がいくつも飛んだ。高速でいくつもの種を飛ばす様子はまさにマシンガン。灰色の冷蔵庫はオレンジ色に変わった瞬間『種マシンガン』が炸裂した。

「ビビビビッ!?」

 冷蔵庫は一瞬怯んだ。攻撃される前に仕掛けたけど仕留めるには弱い攻撃だった。案の定オレンジ色の冷蔵庫は扉を開き辺りの熱を奪い取った。

チェリンボ避けて!」

 急に部屋が冷え込んだ。大技が来る。アタシには当たるかもしれないけどチェリンボなら避けきれる。そう信じてチェリンボに避けるように指示した。だけどチェリンボはその場を動かず微かに光った。特殊防御を上げる『成長』だ。いくら特殊防御力を上げたって氷タイプの特殊攻撃技を耐えられるわけないのに!

「リイイイッ!」

―ピキキッ。

 腕で顔を保護した。目をつぶったアタシに聞こえたのはチェリンボの叫び声と何かが氷る音。

チェリンボ……!」

 チェリンボは氷付けになっていた。チェリンボの後ろ以外の場所はカチンコチンに凍っていた。チェリンボ…………アタシを庇うためにわざと避けなかったんだ……!

「いやああああああああ!!チェリンボオオオ!!」

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***

 

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 オレンジ色の3段重ねの冷蔵庫。上と下は引き出しで真ん中は2つのドアがついている。頭には今まで襲ってきた電気製品と同じように角がある。紫色に光る冷蔵庫には大きな鉄板のような手が2本生えていた。

「ビービビビビビビ!キヒヒ♪」

 アタシは凍ったチェリンボを抱きしめた。冷蔵庫は笑ってる。アタシたちが困っているのを見て楽しんでいるんだ。最低なポケモン

「どうした!ナタネ!」
「ピーーッ」

 ジュンとキャモメが来る。駄目……!

「来ちゃ駄目!」

 冷蔵庫は待ってくれずジュンたちに向かって吹雪が放たれた。

「おっと」
「ピーッ」

 間一髪。キャモメとジュンはそれぞれ反対方向に避けた。ヒヤヒヤさせるわね。でも無事で良かった。

「ノーマル・飛行なら氷に弱いけど水・飛行なら氷タイプは弱点にならないぜ!『翼で打つ』!」

 キャモメは右翼で冷蔵庫を打った。冷蔵庫もそこまで接近されるとは思わなかったみたいであたふたしてるうちにダメージを受けた。

「ビビッ……」

 冷蔵庫は横に倒れて動かなくなった。光るのをやめ色も灰色に戻った。油断は禁物だ。アタシはチェリンボをボールに戻し気を引き締めた。

「気をつけて……まだやられていない。どこかに潜んでいるはず」
「ああ……」
「キュエー」
「ルー」

 アタシたちは一箇所に集まり背中を合わせた。全方向を監視していたらどこからか電撃が来た。

 「キュエエエエエッ!?」
キャモメ!?」
「なっ!?」

 水・飛行は草タイプも氷タイプも弱点じゃないけど電気タイプには4倍弱かった。次はどの電気製品が動いたの?それを確かめにキッチンを出た。電気製品を見る前に宙に浮く不思議な物体が目に入った。

「何あれ……?」

 テーブルの真ん中にオレンジ色の2段重ねの球体が浮いていた。鏡餅を逆さにして角をつけた体は水色の光に包まれている。光から稲妻の形の腕が2本形成されていた。大きい円にはお馴染みの虚ろだけどはっきりした目があった。違う……このポケモンを包んでいる光はただの光じゃない。

 アタシは洋館に入ってから起きた出来事を思い出した。ジュンの顔をすり抜けておどかしたゴース。念力でピアノを動かしていたムウマ。順番に動き出す電気製品。電気タイプの攻撃でやられたジュンのキャモメ。これらの辻褄《つじつま》を合わせてアタシは一つの結論に辿り着いた。

「わかった!こいつの正体はプラズマよ!」
「ええっ!?」
「ルー?」

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 たぶんこのポケモンのタイプは電気・ゴースト。電気製品に入っていたから鋼タイプと思い込んでしまった。迂闊だった。複数のポケモンが襲い掛かってきたと思ったけど全部この1匹のポケモンの仕業だったのね!

「キヒヒヒ♪」

 ポケモンは笑うと扇風機まで一直線に飛んだ。まずい……!

「また大技が来る!」
「えっ!?」

 アタシはジュンを引っぱって芝刈り機が出てきた部屋に入った。最後にナエトルが部屋に入ったときには風を切る音が聞こえた。

「なんだってんだよー!」

 アタシはそっとダイニングルームを覗いた。風の斬撃波が部屋の中心からあちこちに放たれていた。

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エアスラッシュよ。これまでの技より威力は劣るけどそれでも十分危険な技だわ」

 飛行タイプ特殊技で2番目に強い技、『エアスラッシュ』。威力75・命中率95。おまけに3割の確立で相手を怯ませる効果つき。 

「あなた、残りのポケモンは?」
ナエトルだけだ」
「ルー」
「アタシもナエトルしか残ってないわ」

 アタシは重い息を吐いた。手負いのナエトルと無傷のナエトル。だけどあのポケモンに挑むのは無茶だ。草・水・炎・氷・飛行タイプの技を使えるポケモンに草タイプで挑むだなんて自殺しにいくようなものだ。

「どうすればいいんだよ……」

 どうすればいいかわからず部屋を見渡した。床には箱が3個、ガーデニングや庭を整備する道具が入った棚が2つ。そして棚の向こうにドアがあった。ドア……。洋館に入ってからずいぶん外に出てない。お化けだらけの建物より虫ポケモンが出てくる外が急に恋しくなった。

「ジュン。あそこにあるドアが見える?」
「ん?……ああ」

 ジュンはアタシに指摘されて初めてドアの存在に気づいた。言うことを聞いてくれればいいけど……。

「あそこのドアは裏庭に通じていると思うの。アタシたちのポケモンじゃあのデタラメなポケモンに敵わない。ここは一時撤退しましょ」
「逃げるのかよ!」
「いったん町へ戻るだけよ!」

 声を荒げてしまった。反対するとは思ったけどここは説得しなければならない。

「町へ戻って応援を呼ぶわ。ポケモン理事会に報告すればアタシより強いジムリーダーが来てくれるはず。アタシは責任を持って彼女をここまで案内する。それでいいじゃない!」
「ふざけんな!オレたちやられっぱなしじゃねーか!」

 ああん、もう!ここまで聞き分けの悪い子だとは思わなかったわ!早くここから出ないとまたあのポケモンが襲ってくる。風の音はまだ続いてるけどそれが止むのも時間の問題だ。この子を置いてアタシだけ逃げるなんてことできるわけないのに!

「どれくらい時間がかかるんだよ!」
「今夜はもう無理ね。報告すれば明日か明後日にはメリッサさんが……」
「そうやって逃げるのかよ!しっかりしろ!おまえはジムリーダーなんだろ?ハクタイシティで一番強いトレーナーだろ?みんながおまえを頼りにしているのに逃げてどうするんだよ!」
「アタシは逃げるつもりなんか……」

 冷静に今の状況を判断して撤退を決めたつもりだった。アタシは目の前の状況から逃げようとしているだけなの……?

「なんでおまえジムリーダーになったんだよ?森の洋館に入るのもいやがってたじゃん。洋館に入るのがいやなら最初からジムリーダーになるな!」

 胸が痛んだ。心に電撃を喰らったみたいだった。胸を押さえて両目を閉じた。アタシは…………アタシは…………草ポケモンが大好きで……草ポケモンを馬鹿にする人が許せなくて……草ポケモンが強いことを証明したくてジムリーダーになったんだ。親友のモミだけ味方でいてくれて………2人で特訓して………ようやく2年前ジムリーダーになれたんだ。

 最初は頼りないって周りから心配されたけど段々実力が認められて………アタシと草ポケモンを馬鹿にする人はいつの間にかいなくなっていった。ジムリーダーになってアタシと草ポケモンを周囲に認めさせるという夢を叶えて………今度は新しい目標が出来て……。…………駄目だ。こんなかっこわるい姿、モミにもヒョウタさんにも見せたくない。2人とも優しいから慰めてくれるかもしれないけどその優しさが逆に辛い。慰められる日はもう終わったの。これからは前を向くんだ。アタシは重いまぶたを一気に開いた。

「……ごめん!弱音吐いて!アタシは逃げないわ……戦う!」
「そうこなくっちゃ!」
「ルー!」 

 ジュンはガッツポーズをした。アタシは笑うと道具が入っている棚を見た。棚から剥きだしになったガーデニング用の土が目に入る。アタシは腰につけていたポーチを開けた。右手にはアーミーナイフ、左手には技マシンを持った。

「あそこの袋に入っている土をこっちに持ってきて!」
「りょーかい!」
「ルー!」

 ジュンとナエトルが土を引きずっている間アタシは自分のナエトルを出した。

「これ、あなたにあげる」
「へ?」

 アタシは技マシン32をケースから出してジュンに渡した。

「あなたのナエトルに覚えさせて。中身は……」

 アタシはジュンと2匹のナエトルに作戦を説明した。作戦を説明し終わった時ちょうど風の音が止んだ。それを合図にアタシは自分のナエトルを戻しジュンとジュンのナエトルが飛び出した。反撃開始よ!

 

***

 

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「オレはこっちだこのヤロー!」
「ルー!」

 壁の向こうからジュンとナエトルの威勢の良い声が聞こえた。作戦が始まった。もう逃げることはできない。

「キヒ?……ビビーッ!」
「『からにこもる』!」

 電気が弾ける音がした。ナエトルとプラズマポケモンの戦いが始まったんだ。

「『すいとる』んだ!」
「ルー!」
「ビイイイィッ!」

 壁から顔を半分だけ出した。ジュンが戦っている。上手くプラズマポケモンの気をひいてるみたい。運が良いことにプラズマポケモンはまだ電気製品に入っていない。アタシたちを追い詰めたからきっと油断しているんだ。

 アタシは部屋からこっそり出た。土入りの袋を引きずりながら。袋が床にこすれてズズズと音を立てた。体から出る汗の量が増えていく。プラズマポケモンがいつアタシに気づくか気が気でなかった。ジュンは作戦通り上手くプラズマポケモンをテーブルの向こうに誘導していた。アタシがいる方向には背を向けているしジュンとナエトルと対峙しているからしばらくバレないとは思うけど……。アタシはバトルの様子をチラ見した。プラズマポケモンナエトルにHPを吸い取られて苦しんでいる。

「…………」

 ジュンと目が合った。その目はアタシに「頼むぞ」と言っている気がした。アタシはコクンと頷くとシャベルで土をすくった。植物関係の科学には疎《うと》いけどプラズマは電気が中性になっている状態というのは覚えている。プラスだろうがマイナスだろうが中性だろうが電気は電気。もしかしたら電気製品を土まみれにすればいくらプラズマポケモンでも電気製品に入りにくくなるかもしれない。

 そこでアタシは作戦を思いついた。どちらかがプラズマポケモンと戦っている間にもう片方が電気製品を使えないようにする。戦う役はジュンが買って出た。本来はアタシが戦ってもよかったけどあえてジュンに譲った。ジュンのナエトルはダメージを受けていたから相手が油断すると踏んだからだ。アタシは一番近くにあった電気製品にありったけの土を被せた。まずは洗濯機から……。

「ビビーッン♪」
「わっ!?」
「ルッ!?」

 ジュンとナエトルが驚く声が聞こえた。たぶんプラズマポケモンが『驚かす』を使ったんだ。『驚かす』はイタズラ好きが多いゴーストポケモンがよく使うゴーストタイプの技。威力は『体当たり』より低いけどたまに相手を怯ませることがある。

「ちいっ……!」

 ジュンは舌打ちした。ナエトルが怯んだみたい。ナエトルは動きが遅いから大抵の場合先手を取られてしまう。2匹の戦闘が気になるけどアタシはジュンを信じている。少しだけ軽くなった袋を持って芝刈り機のほうへ移動した。

「ビビーッ!」

 芝刈り機に適当に土を被せ終わったら再び電気の音が聞こえた。プラズマポケモンの『電気ショック』がナエトルに直撃したんだ。だけどナエトルはまだやられない。草ポケモンが電気を通しにくいのが幸いした。

「がんばれナエトル!」
「ル~……」

 ジュン……ナエトル……がんばって……!アタシは体を屈《かが》んでテーブルに近づいた。テーブルとイスが死角になってアタシを隠してくれる。テーブルの上に置いてあった扇風機に土を被せた。

「キヒヒ……キーヒヒ、キヒーヒ♪」

 プラズマポケモンが笑った。その笑い方に思わず歯を食いしばる。この笑い方には聞き覚えがある。アタシと草ポケモンを馬鹿にしていたころと同じ笑い方だ。くやしい…………でも耐えなければいけない。電気製品はまだ3個残っている。アタシは笑い声に紛れて扇風機に土をかけた。これで残り2個……。

「こうなったら……『影分身』!!」
「ルルー!」

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 出た!アタシたちの切り札、『影分身』!ナエトルは遅いから相手の攻撃を避けるのが基本苦手だ。それをカバーするために使った技マシンの中身が『影分身』。単調な動きを素早く繰り返すことで分身を作り、相手を惑わせ回避率を上げる技だ。素早さが低いナエトルでも狭い範囲なら短く簡単な動きを早く繰り返すことくらいできる。

「ビ……ビビ?」

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 今まで優位に立っていたプラズマポケモンは戸惑った。なにせ分身とはいえナエトルがたくさんいるんだから。こんなにたくさんナエトルがいればアタシのナエトルを出してもバレない。最後の手持ちポケモンが入っているボールを開けた。アタシのナエトルは鳴き声を出すかわりに頷き、そそくさと『宿り木の種』を発射した。種は扇風機に絡みつき扇風機は蔓でやがて見えなくなった。あらかじめみんなに作戦を説明するときにアタシのナエトルに指示は出していた。ナエトルは芝刈り機と洗濯機にも種を跳ばした。電気製品に土を被せて更に蔓でグルグル巻きにしちゃえばいくらプラズマポケモンといえども入れないはずだ。

「『はっぱカッター』!」
「ルーッ!」

 ナエトルとあちこちにいるナエトルの分身が一斉にはっぱをクナイのように投げた。どれが本物の『はっぱカッター』かわからず戸惑うプラズマポケモン。今までの憂さ晴らしも兼ねているのかジュンと彼のナエトルはノリノリだった。アタシも今までのお返しとしてアタシのナエトルにも『はっぱカッター』を打たせた。

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「ビ~?ビビ~ッ!」

 プラズマポケモンの叫び声が聞こえる。ざまあ見なさい。アタシたちを苦しませた罰よ。アタシは声を出さずに笑いながら四つん這いになって前へ進んだ。床に横たわる電子レンジまであと10歩……8歩……6歩……。あと4歩というところで事態は発生した。プラズマポケモンがテーブルを飛び越えてきたのだ。

 

***

 

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 やばい……やばいやばいやばいっ!アタシは命がけで慣れない4本足で走った。恐怖で体が熱い。テーブルを抜けると左手と右足を使って強引に体を右にねじりこんだ。プラズマポケモンに見られてないかしら? 

「ビ?」

 プラズマポケモンの声がアタシのいる方向へ発せられた気がした。その声を聞いて肩が勝手に上がった。震える手でシャベルを握り、襲ってきたらどうしようと泣きたくなった。

「よそ見すんな!『はっぱカッター』はまだ続いてるんだぞ!」
「ルー!」
「ビッ……!」

  ジュンの言っていたことは正しかった。『リーフストーム』ほどではないとはいえ無数のはっぱはブーメランのように部屋中を飛び回りプラズマポケモンを狙っていた。

 ふう。よかった。アタシの体は安心して再び呼吸を始めた。アタシのナエトルがマントをひっぱった。分身に紛れて来てくれたんだ。

 アタシはテーブルの角に隠れたまま電子レンジを封印した。今までしてきたことと同じだ。機械に土を被せて『宿り木の種』で拘束する。テーブルの横から土が飛んでくるなんて変な光景かもしれないけど幸いプラズマポケモンには後ろを振り向く余裕はなかった。だいぶ軽くなった土入りの袋を両手で抱えて自分のナエトルと顔を合わせた。あとは冷蔵庫を使えなくするだけだ。プラズマポケモンがジュンとジュンのナエトルしか見ていないことを確認してキッチンへ思い切って走った。

「ビ~……ビビ!」

 走っている最中にプラズマポケモンが唸った。異常に気づいたのかもしれないけどアタシにとってキッチンに行くことが先決だった。振り向いていられない。キッチンに入った直後プラズマポケモンの悲痛な叫びが聞こえた。

「ビーーーーーー!?ビビビッ!!」
「かかったな!」
「ルー!」

 ジュンたちの姿が見えないけどアタシにはわかった。プラズマポケモンは電気製品の中に入って散々アタシたちを苦しめてきた。芝刈り機の『リーフストーム』、洗濯機の『ハイドロポンプ』、電子レンジの『オーバーヒート』、冷蔵庫の『吹雪』、扇風機の『エアスラッシュ』、そして元々使える『電気ショック』…………6つのタイプを使い分けてアタシたちを追い詰めたプラズマポケモンは調子に乗っていた。アタシたちは取るに取らない相手だと。やられかけているアタシたちをやっつけるのに電気製品に入り込む必要はないと思っていたけど形勢逆転!アタシたちの作戦によって今度はプラズマポケモンのほうが追い詰められた。慌てて電気製品に入ろうとしたけど周りにある電気製品は蔓に覆われていた。パニックになっても仕方がないと思う。もっとも、自業自得だけどね。

「ビーー!ビビビーッ!」
「しまった!ナタネー!!」

 いよいろ袋の中身を冷蔵庫にぶちまけようとしていたときにプラズマポケモンが血相を変えてキッチンに入ってきた。だけどアタシは自分でも驚くほどこの状況を冷静に対応した。袋の矛先を冷蔵庫からプラズマポケモンに変え土をかけた。

「喰らいなさいっ!」
「ビーーーッ!?」

 プラズマポケモンは攻撃の命中率が下がる『砂かけ』ならぬ『土かけ』を喰らい怯んだ。袋にまだ土が残っていることを重さで実感して残りの土を冷蔵庫目掛けて投げた。

「『宿り木の種』!」
「るう!」

 

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 アタシのナエトルはその指示を待っていたかのように返事をした。宿り木は急速成長を遂げ冷蔵庫はミイラのように蔓で覆われた。

「ビイイイイイイイイッ!!」

 今まで上げた声の中で一番大きかった。だけど同情の余地はなかった。それにプラズマポケモンは怒ってアタシのナエトルに電撃を放ってきた。電撃を浴びながらもナエトルは踏んばった。アタシを信頼してくれる証拠。その信頼にアタシも応えなければいけない。

「『しびれ粉』!」
「るっ!」

 ナエトルは深呼吸すると黄色い粉を息に乗せて吐いた。プラズマポケモンは冷静さを失っていたのか命中率があまり高くない『しびれ粉』を避けられなかった。

「ビ~~!……ビッ、ビッ」 

 状態異常を起こす粉を吸い込みプラズマポケモンは咳き込んだ。時は満ちた……!

「ジュン!今よ!」
「行けー!モンスターボール!」
「ルーー!」

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「ビーーッ!?」

―コンッ…………カッ。

 赤白のボールはその口を開き無慈悲にもイタズラ好きなプラズマ生命体を吸い込んだ。ボールは揺れて、揺れて、揺れては揺れ、ついに動かなくなった。

―フォン。

 ボールがポケモンを完全に捕らえたことを知りアタシは安堵の息をもらした。やった……捕獲成功……。

「……ぃよっしゃあああ!ヒャッハー!ヒュー♪オレすげー!」
「ルー!ルー!」 

 肩がとても軽くなった。無性に笑いたくなった。うれしかった。森の洋館に入ってから起きた出来事とアタシの反応を思い出したら我ながら馬鹿馬鹿しく思えて気づけば声に出して笑っていた。

「アハッ。アハハハハッ!」
「るう。るるるるるっ!」
「なんだよ?急に笑って」

 自分でもわからない。安心してなんだか笑いたくなった。

「いやっ……アハハハ!なんか……アハハッ!変な気分」
「るっるっるっ!」

 プラズマポケモンにはかなり手こずった。大事な仲間のロズレイドチェリンボがやられたし大変だった。だけど全てが終わった今思い返してむるとこのバトルはけっこう楽しかった。ジュンのポニータキャモメもやられたのに。

「なんだよ……まあ、いいや。事件も解決したし、ハクタイシティに戻ろうぜ」 

 ジュンはナエトルに労《ねぎら》いの言葉を掛けるとボールに戻した。アタシもナエトルをボールに戻そうとしたけどナエトルが麻痺してることに気づいた。おそらく『しびれ粉』を使う前に喰らった電撃にやられたのね。『電気ショック』か『電磁波』かしら。

「おつかれ、ナエトル
「るう……」

 ナエトルを戻してからふと思った。ナエトルにニックネームをつけようかな?そうじゃないとジュンのナエトルと被っちゃう。新入りにしてはナエトルはよく頑張ったもの。

「おーい。おいてくぞー!」
「今行くー!」

 キッチンを出ようとしたらプラスチックのカバーで包装された羊羹《ようかん》を見つけた。なんでこんなところに置いてあるんだろう?疑問に思ったけどアタシは羊羹をポケットに入れた。理由?特にないわ。ただ記念に持って帰ろうかなって思っただけ。あとでナエトルにあげようかな。

「くう~……オレ超めずらしいポケモンをゲットしちまったぜ!ヒカリに自慢しよっと♪」
「アハハ。きっと褒めてくれるわよ」
「だろ?へへっ!」

 出入り口まで歩きながらアタシたちは笑った。アタシもモミやヒョウタさんに森の洋館で起こったことを話そう。きっと2人とも褒めてくれる。「成長したね」って。ジュンと二手に分かれて重いドアを開けた。空は暗かったけど心はとても明るかった。

 

 

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4コマ漫画: 日本人の名前

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  毎回のことながら実際にあった会話です。おそらく友だちがアメリカに留学していたときの体験でしょう。さすがに日本に住んでいる外国人は日本人の名前と日本語が母音(a,i,u,e,o)で構成されていることに気づいているはず……。

 

 日本では名字が10万種類ありますが、中国では4千、韓国では250しかないそうです。ぶっちゃけ日本は名字を作りすぎ(笑)。明治初期に名字を登録することになってそのときに名字が爆発的に増えたと思っていましたがどうやら違うようです。皇族・貴族・武家・武士以外の人達も実は名字がありましたが公の場で名乗れなかっただけだそうです。そういえば漫画/ドラマの「JIN -仁-」でも医者や商人はちゃんと名字ありましたね……。

 

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 


Wikipediaの日本の苗字の記事

ja.wikipedia.org

 
 韓国は昔、中国の属国だった影響で中国の名字を使っていると父が言っていましたが……。Yahoo!知恵袋ですけどそれの説明となる記事を見つけました。

 

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 


東京外国語大学の教授のサイトが韓国の名字について詳しい記事を書いています。

www.tufs.ac.jp

 

 世界の名字に関しては日経の記事が詳しいことを述べています。

style.nikkei.com

 

 

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